福島原発被害東京訴訟東京判決を受けての声明

福島原発被害東京訴訟東京地裁判決を受けて、原告団・弁護団は声明を発表しました。

<福島原発被害東京訴訟東京判決を受けての声明>
1 はじめに
 本日,東京地方裁判所民事第50部(水野有子裁判長,浦上薫史裁判官,仲吉統裁判官)は,福島原発被害東京訴訟について,国の責任を認め,被告国と被告東京電力に対し賠償を命じる判決言い渡した。
 この訴訟は,2011年3月11日に発生した東京電力福島第一原子力発電所事故により,福島県内から東京都内へ避難を余儀なくされた原告ら17世帯48名(後に1名死亡)が,国と東京電力を被告として,2013年3月11日に提訴したものである。
2 被告らの責任について
 本判決では,まず,被告国は,2002年には,福島第一原発において炉心溶融を伴う重大事故をもたらす原発の敷地高を超えて敷地が浸水する津波が発生することを予見することができたとし,2006年までに電気事業法40条に基づく技術基準適合命令を発して東京電力に対し原子炉施設の安全性を確保する権限を行使していれば,本件事故結果を回避できたことを認めた。
 すなわち,被告国において2002年に敷地高さを超える津波を予見したうえで,被告東京電力において,津波による全電源喪失を想定したバッテリー設置,手順策定等の対策を講じさせていれば回避できたと判断した。
 このように本判決は,昨年3月の前橋地裁,10月の福島地裁,昨日の京都地裁に続いて,四度,司法の場において,福島原発事故について被告国及び被告東京電力の加害責任を明確にし,断罪したものである。
 このように福島第一原発事故における被告らの加害責任に関する論争は,決着がついたものと言って過言ではない。被告らは,今後,無用な争いを続けることなく,被害者に対して,加害責任を認め,謝罪し,誠意ある対応をすべきである。
3 賠償額について
(1) 判決は,原子力損害賠償紛争審査会が定めた中間指針を「金科玉条」のごとく掲げて,これを超える賠償請求を拒絶し続けている被告東京電力に対して,原賠法を引用し,自主的に参照される目安にとどまるものであり,裁判所を拘束するものではないとして,一蹴した。中間指針の裁判規範性については,これまでの各判決においても否定しており,もはや,論ずるまでのことではない。
(2) 次に,判決は,原告らいわゆる区域外からの避難者についても,放射性物質の汚染による健康への侵害の危険が一定程度あるとして,避難をすることに合理性があると判断した。
  しかしながら,判決では,区域外避難者について,本件事故との間の相当因果関係が認められる損害が発生した期間として原則として2011年12月まで(ただし,子ども妊婦は2012年8月まで),旧緊急時避難準備区域からの避難者については,中間指針と同様2012年8月までに限定している。しかし,原告らの自宅・避難元の土壌汚染はなお放射線管理区域と指定される基準を超える状態が続いており,いまなお,放射線被ばくリスク回避行動をとるべき合理性があるというべきであって,避難期間を限定した判断には理由がないといわざるを得ない。
(3) そのうえで,判決は,それぞれの原告が本件事故によって被った精神的苦痛を個別具体的に認定したうえで,これをもとに原告らについて本件原発事故と因果関係のある精神的損害に対する慰謝料として区域外避難者について70万円~200万円(既払金による控除前の金額)を認めた。これらは中間指針に基づく賠償額を若干ではあるが上回っている点は評価したい。
  しかし,それでもなお認容された慰謝料額では,原発事故被害者の精神的損害を慰謝するためにはなお不十分であると言わざるをえないのであり,すべての原発事故被害者に対して適正な賠償を実現することは本判決においても,なお克服すべき課題である。
4 原発事故被害者の全面救済を
 2011(平成23)年3月11日に発生した福島第一原発事故から既に7年が経過した。にもかかわらず、放射能で汚染された地下水が海へ流出し続けるなど、依然として事故の収束の目途は立っていない。未だ多くの人々が避難を余儀なくされており、被災者の被った甚大な被害の原状回復と完全賠償も実現されていない。それどころか応急仮設住宅の無償提供打ち切りなど,避難者の生活を脅かす事態が進行している。
 これまでの各判決,そして,本日の判決において,被告国や被告東京電力の加害責任が司法の場においても明らかとなった今,国や東京電力が行うべきは,被害者の切り捨てではなく,加害責任を前提にした原発事故の過酷な被害実態を踏まえた完全賠償の実現及び生活圏の原状回復を含む生活再建のための諸施策をとることを強く求める。
 私たち原告団・弁護団は,本判決を受けて,今後も,被告国及び被告東京電力の責任において,すべての原発事故被害者が原発事故前のくらしを取り戻すための原状回復措置をとること及び被害に対する完全賠償を実現させるために全力を尽くす決意である。
2018(平成30)年3月16日
福島原発被害東京訴訟原告団
福島原発被害首都圏弁護団

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