東京電力は,5月17日,広野町の要望書に対する回答をしました。[東電の回答書]
広野町は,「2 今もって町民の帰還率は1割程度であることから,町民の生活再建が出来るまでの期間は完全賠償を行うこと。」と要望しました。当たり前の要求です。
これに対する東電の回答は,
「弊社は,原子力損害賠償紛争審査会による中間指針第二次追捕および平成24年7月20日に政府の方針として公表された避難指示区域の見直しに伴う賠償基準の考え方について」を踏まえ,同年7月24日に公表した避難指示区域の見直しに伴う賠償の実施について」において、各区域における標準的な避難解除見込み時期を踏まえた賠償の実施についてお示ししております。
貴町はじめ旧緊急時避難準備区域における避難等を余儀なくされた事に伴う精神的損害,避難・帰宅に係る費用への賠償につきましては,紛争審査会第二次追補を踏まえ,原則として平成24年8月未までとさせていただいております。
・・・中略・・・
平成25年4月以降につきましては大変申し訳ございませんが,既に避難指示が解除されて相当期間が経過していることから,精神的損害への賠償金のお支払いは致しかねますので,何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。
・・・以下略」
というものでした。
先日,広野町に行ってきましたが,原発の労働関係者と思われる人以外は,ほとんどいませんでした。町の機能は相当なダメージを受けています。放射線量も高く,除染をはじめ原状回復も遅々として進んでいません。戻った人が1割程度で,大多数の人が避難生活を余儀なくされているのも当然です。しかし,東電は,こうした実情を無視し,賠償を拒否しているのです。
今後,避難区域の「再編」がすすむにつれて,こうした事態は,あちこちで生じるものと予想されます。そして,区域内外による分断と同様に,被害者のさらなる分断がなされていきます。
原子力損害賠償紛争審査会は,最近現地を視察したと報道がなされています。裏を返せば,これまで現地に行くことなく指針等を定めていたということになります。このようなところで作成された指針などは,到底被害実態を反映したものでないことは明らかです。現に,加害者である東電に利用されているのです。
私たちは,こうした動きに屈することなく,すべての原発事故被害者の救済,生活再建を実現させるためにたたかっていきます。