原発事故子ども被災者支援法(以下「支援法」)が昨年成立しました。しかし,依然として基本方針すら定まっていません。そもそも,この支援法自体に問題点が内包されています。以下,当弁護団の共同代表である森川清弁護士に支援法の問題点について解説してもらいました。
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支援法の支援対象地域は、いつ定められるのだろうか?
また、定めた支援対象地域は、その後、簡単に変更・廃止されないのだろうか?
実は、支援法には、「支援対象地域」の定義は括弧書きで記載されているものの、支援対象地域を定める時期や手続や形式についての記載がありません。
そうすると、復興庁水野参事官が国会議員の皆さんに対し「法律をちゃんと読んでいただきたい。政府はこれこれにつき必要な措置を講ずる。何が必要かは政府が決めるんです。そういう法律になっているんです。」と述べたように、政府がなんらかの方法で支援対象地域を決めさえすればいいことになります。支援対象地域の廃止も同様です。不意打ち的な対応がとられることもありえます。(*1)
たとえば、支援対象地域を明文で「福島県内の全市町村及び政令で定めた市町村とする」「支援対象地域を政令で定めるための基準は、・・・のほか内閣府令で定める」などと規定しておけば、国会で法改正しない限り、「福島県内の全市町村」は支援対象地域で在り続けるわけです。また、政令や府省令を定めるにあたっては、行政手続法に基づくパブリックコメント制度(パブコメ)による意見を考慮しなければならないこととなっていますから、その他の地域を定めるにあたってパブコメによる意見提出の機会があり、不意打ちもしにくくなります。
意見の反映として、支援法14条に「国は、第八条から前条までの施策の適正な実施に資するため、当該施策の具体的な内容に被災者の意見を反映し、当該内容を定める過程を被災者にとって透明性の高いものとするために必要な措置を講ずるものとする。」と規定されていますが、意見反映のために何が必要かも政府が決める建付けになっていて、政令・府省令のようにパブコメが義務付けられているわけではありません。
また、厳密にいえば、支援対象地域の設定について何らの規定がないので、支援法14条の規定の対象となっていないともいえます。意見考慮の要請が強いはずのところに、全くそのようなものが明文で盛り込まれていないのです。
ですから、法律上は、容易に支援対象地域の廃止もできるわけです。
政令で定めた支援対象地域を廃止するには、政令・府省令の改正をしなければならなくなりますから、当然パブコメが義務付けられることとなります。
しかし、それがないわけですから、支援対象地域について、政府を法的に拘束するものはないので、政府が必要だと判断すればいいこととなります。
支援対象地域を定める時期や手続や形式について明文化することはとても大事です。今回の決定だけでなく、その後の改廃まで関わりますので、今からでも遅くありません。支援対象地域を定める時期や手続や形式を明文化すべきです。
*1 http://www.ourplanet-tv.org/?q=node%2F1556
5分くらいのところで、引用の水野参事官の文言が登場します。
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