月別アーカイブ: 2013年4月

関西弁護団の説明会に参加しました

今日は,原発賠償に関して,関西弁護団の要請を受けて,大阪弁護士会館で行なわれた説明会に参加しました。
当弁護団からは,3月11日に提訴した東京訴訟の説明や訴訟の意義などについて,話をしました。

その後,関西弁護団の弁護士による説明がなされ,いくつかのテーブルに分かれて,被害者と関西弁護団の弁護士との意見交換にも参加させていただきました。被害者の皆さんは,避難生活の困難さや様々な苦悩を語っていました。相談会終了後,関西弁護団の弁護士と懇親会で意見交換をして,問題意識等の共有が出来ました。

関西弁護団をはじめ全国の多くの弁護団が提訴に向けて準備をしています。
当弁護団は,今後も,各地の弁護団と連携して,国や東京電力の責任を追及していきたいと思います。

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東京訴訟第1回期日決定!(6/12)

当弁護団が3月11日に提訴しました福島原発被害東京訴訟(第1次)の第1回期日が決まり
ました。

6月12日 10時~ 東京地方裁判所103号法廷
です。
期日では,原告や弁護団の意見陳述など30分程度を予定しています。
また,期日後,報告集会等を予定しています。

当日の具体的なスケジュールなどは決まり次第お伝えします。
宜しくお願いします。

[東京地方裁判所の場所・アクセス]
東京都千代田区霞が関1丁目1番4号( 地図 。霞ヶ関駅周辺の地図 )
地下鉄東京メトロ丸の内線・日比谷線・千代田線  霞ヶ関駅 A1出口から徒歩1分
地下鉄東京メトロ有楽町線 桜田門駅 5番出口から徒歩約3分
都営地下鉄三田線 内幸町駅から徒歩10分

栃木県北地域の住民も提訴へ

昨日(4月20日)に那須塩原市の厚崎公民館で当弁護団による説明・相談会を実施しました。

当日は,10数世帯の方々が参加しました。まずは,当弁護団から,原発賠償の現状,特に栃木県北地域は事業賠償の一部を除けば完全に放置されていること,裁判を起こすことの意義(加害責任を明確にすることが賠償問題のみならず除染・健康管理等の恒久対策を責任を持って行わせるために必要であることなど),今後の提訴に向けての段取りについてなどを1時間ほど説明し,その後参加者からの質疑応答が1時間ほどなされました。
そして,個別の相談・聴き取りが行われました。
相談会終了後は,地元の市民団体の方々と今後の方針について協議をしました。

栃木県北地域は,現在でも放射線量が高い地域です。会場の公民館の入り口でさえ0.39μSv/時を示しています。しかし,賠償問題は放置されたままです。例えば,原発事故後に多くの方が自ら除染等を行いましたが,東京電力は,その除染にかかった費用すら支払おうとしません。充分な除染がなされないまま,生活に対する様々な不安を抱えながら生活を送っています。
この状況を打破するためにも,当弁護団としては,6月から夏ごろを目処に,国と東京電力を被告として損害賠償請求訴訟を提起する予定です。

栃木県北地域説明会20130420-2 栃木県北地域説明会20130420

栃木県北地域での説明会を行ないます(4月20日)!

当弁護団では,4月20日13時30分から,栃木県北地域での原発事故の賠償請求に関する地域住民・事業者向け説明会・相談会を開催します。

日時:2013年4月20日 13時30分から
場所:那須塩原市 厚崎公民館 [地図
[JR那須塩原駅から白河方面へ4キロメートル黒磯文化会館の隣,または,JR黒磯駅から西那須野方面へ4キロメートル黒磯文化会館の隣]

原発事故に関する福島県外の住民に対する賠償については,全く進んでいませんし,東電も基本的に応じようとしません。また,事業者に対する賠償については,風評被害などで一部なされているものの,充分なものではありません。

こうした現状を打破するためには,訴訟を視野に入れた対応を考えなくてはならない時期に来ています。そこで,説明会では,原発事故の賠償問題に関する現状,3月11日に東京地裁で提訴した集団訴訟の概要,今後の住民被害・企業損害の賠償請求の考え方等についてご報告するとともに,栃木県北地域における集団訴訟に向けた取り組みの方針についてご説明します。この取り組みは,単に賠償問題だけでなく,除染や子どもの健康問題,医療費など原状回復,恒久対策を求めていく上でも重要なものですので,そのことについてもご説明します。
そして,説明会後には,希望者には,個別の相談会を行ないます。

お問い合わせは,当弁護団(オアシス法律事務所 03-5363-0138)まで。

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区域外避難者をめぐる問題について(4)~公的支援の欠如[義援金]

今回は,区域外避難者に対する公的支援に関して,義援金の問題を取り上げます。

義援金は,災害の初期にかかる被災者の費用を賄うための原資として,被災世帯にとっては重要な意味を持っています。しかし,この分配においても,区域外避難者は,避難区域等からの避難者とは異なる取扱いを受けました。
日本赤十字社に全国から集められた東日本大震災の義援金は,厚生労働省の指導・協力のもと,学識経験者,被災都道県および日本赤十字社,中央共同募金会をはじめとする義援金受付団体を構成メンバーとする義援金配分割合決定委員会によって,配分の基準が決められました。同委員会は,2011年4月8日,第1次分の配分割合の基準を決めました。それによれば,福島原発事故事故による避難指示及び屋内退避の指示を受けた人に対して,住宅が全壊した場合に準じて,1世帯35万円を分配することとなりました。また,福島県の配分委員会は,福島原発事故事故による避難指示または屋内退避の指示を受けた人に対して,県の義援金として,5万円を追加して支払うことにしました。しかし,区域外避難者については,義援金の配分はありませんでした。
そして,第2次分については,2011年6月7日の同委員会で,都道府県に配分方法が委ねられました(福島県では市町村に更に委ねられました。)。しかし,都道府県への送金額を決める基準となる被災者の数に「原発関係避難世帯」が含まれていたものの,これには区域外避難者はカウントされませんでした。そのため,結局,第2次の義援金についても区域外避難者に配分されることはありませんでした。
以上のとおり,区域外避難者は,地震・津波により,住宅が全半壊した場合や死者・行方不明者がいた場合を除けば,義援金を全く受け取ることができなかったのです。
2013年1月までに,日本赤十字社は,15都道府県に対し,東日本大震災の義援金の分配金として,既に総額3602億円余りを送金しています。しかし,区域外避難者には,ほとんど配分されなかったのです。

公害における「起承転結」[「公害原論」(宇井純 著)から]

みなさんは,宇井純さんをご存じでしょうか?
公害・環境問題研究の先駆者であり,第一人者でした。東大の大学院生・助手時代から水俣病の現地調査を行い,国内外で水俣病の問題を告発してきました。大企業や政府の立場ではなく,公害被害者の立場に立って研究活動をしていました。そのためなのか東大では長年にわたり「助手」に据え置かれたままでしたが,後に沖縄大学の教授となり,精力的に沖縄や世界の環境問題に取り組まれていました(2006年死去)。

彼の著作物に「公害原論」というのがあります。これは,1970年10月から東大工学部で夜間の自主講座として市民向けに行った「公害原論」の講義録です。

同書の98~99頁には,次の内容が記載されています(引用の頁は,「新装版 合本 公害原論」)。
「・・・公害には四つの段階があるらしい。それは起承転結である・・・公害というものが発見され,あるいは被害が出る。それに対して原因の究明,因果関係の研究(第一段目)というものが始まりまして,原因がわかる。これが第二段目とします。そうしますと原因がわかっただけで決して公害は解決しない。第三段目に必ず反論が出てまいります。
この反論は,公害を出している側から出ることもある。あるいは,第三者と称する学識経験者から出される場合もあります。いずれにせよ反論は必ず出てまいります。そうして第四段は中和の段階であって,どれが正しいのかさっぱりわからなくなってしまう。これが公害の四段階であります。この順序が昔から漢詩で使われております起承転結の原則と似ておりますので,起承転結の第一法則と私は言っております。ただ結できちんと締らないところが公害の特徴であります。・・・」

今回の原発事故における放射能汚染被害,健康への影響についても同じ展開になっていることを痛感します。

私たちは,原発事故という未曾有の公害とたたかうことになりますので,これまでの常識・法律論などにとらわれない柔軟な新しい発想が必要ではありますが,他方で,過去の公害事件・薬害事件などの経験・教訓を学び,生かしていかなくてはならないと思います。

区域外避難者をめぐる問題について(3)~公的支援の欠如[医療費]

今回は,区域外避難者に対する公的支援に関して,医療費の問題を取り上げます。

避難区域等からの避難者に対しては,原発事故が発生した直後から医療費の負担が猶予され,2014年2月末まで,医療機関における国民健康保険や後期高齢者医療制度の一部負担金の支払いを免除する措置が取られることとなっています。また,介護保険の利用者負担額についても同様の免除の措置があります。これらの保険料についても,同様に免除されてきました。
しかし,区域外避難者については,2011年3月11日に東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律第2条第3項により政令で特定被災区域に指定された市町村に住所を有している者で,東日本大震災によって,自宅が全半壊したり生計維持者が廃業・休業・失職したりする等の一定の被害を受けている場合に限られます。つまり,区域外避難者の場合は,地震・津波の被害に遭った場合を除けば,医療費の免除を受けることがほとんど受けられないのです。