7月15日午前10時から、東京地裁101号法廷にて、福島原発被害東京訴訟・第12回期日が行われました。
法廷では、当方から、責任論についての国の主張に対する反論を中心とした準備書面(30)と、損害論の総論に関する準備書面(31)(低線量被曝に関するICRPの基準、LNTモデル)及びその関連証拠を提出するとともに、各原告の個別準備書面及び関連証拠を提出しました。
一方、被告の東電からは、原告らの内部被ばくの危険性に関する主張に対する反論である共通準備書面(8)、文書送付嘱託に関する準備書面(9)及び関連証拠が提出されました。
その後、原告団長である鴨下裕也さんの意見陳述と,弁護団の内田耕司弁護士による意見陳述が行われました。
以下で、原告鴨下裕也さんの意見陳述の内容を紹介します。
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1 仮設住宅の提供の打ち切りの発表
私は、この訴訟、福島原発被害東京訴訟の原告団長です。今日は原告団長の立場から、私自身を含め、最近の原告たちの苦しい状況について、お話を致します。
最近、私たち避難世帯を更に苦しめる大きな出来事がありました。
先月の15日、福島県が、現在の避難指示区域以外からの避難者について、災害救助法に基づく応急仮設住宅の提供期間を2017年3月までとし、それ以降は延長しないという方針を決めたのです。
私たち1次・2次訴訟の避難者原告は、全員、避難指示区域から避難しています。以前指定されていた緊急時避難準備区域から避難してきた原告もいますが、緊急時避難準備区域は2011年9月に解除されましたので、今は全員が「避難指示区域以外からの避難者」です。
私たち避難者原告が住んでいる場所は都営住宅や公務員宿舎ですが、法律上はプレハブの仮設住宅と同じように扱われる「みなし仮設住宅」です。これらの仮設住宅は、避難者に無償で提供されてきました。
私も、原発事故の後、「避難指示区域以外」である福島県いわき市から首都圏へ避難し、今は、妻と2人の子どもと共に、東京都内にある「みなし仮設住宅」で避難生活を送っています。
訴状にもありますように、避難指示区域以外からの避難者は、行政からの他の支援はほとんど受けておらず、東京電力から任意の支払いを受けた賠償金もごくわずかです。とりわけ、避難元の福島県内に生計維持者などを残して、母親と子どもだけが東京で避難するという、いわゆる「二重生活」を送っている家族は、特に生活費がかさんで苦しい家計になっています。このため、避難指示区域以外からの避難者にとって、仮設住宅は、避難を続けていくための重要な支援になっており、避難生活の命綱のようなものなのです。
しかし、この避難のための住宅から、私たちは、2017年3月で出て行くよう通告されたのです。
2 避難者の経済的な困難
この決定を知って、多くの避難者が動揺し、これから家賃を負担しながら避難生活を続けられるのかと不安を口にしています。
現在、私が生活している仮設住宅は、東京都内でも家賃相場が高いと言われている地域にあり、夫婦と子ども2人の4人家族が生活できる賃貸物件では月15万円以上の家賃が必要となります。いわきの自宅のローンを支払いながら、このような高額な家賃を負担できるのか、まったく見通しが立ちません。
避難者の中には、私のように避難により福島での仕事を辞めざるを得なかった人はもちろん、二重生活を送っている家族もあり、仮設住宅の無償提供が打ち切られれば、避難生活を続けることは不可能だという人もいます。これは、経済的に苦しい避難指示区域以外からの避難者に対し、事実上帰還を強制するものというほかありません。
仮に現在の仮設住宅のある地域から引っ越せば、大人は転職を、子どもたちは転校をしなければなりません。避難先でようやく新しい人間関係を築いてきた子どもたちの気持ちを考えると、遠方に引っ越すのも躊躇われます。
私も、受験勉強を頑張って希望する中高一貫校へ入学した子どもや、学校で友だちと楽しい学校生活を送っている小学生の子どものことを考えると、遠方への引越しは避けたいという気持ちが強くあります。
家族で生活する上で必須の住宅を追われるという不安があまりにも大きく、提供が打ち切られた後の生活をどうするかは、正直なところ、うまく考えることができない状況です。
私たち避難者原告は、国も東電も安全だとアピールしてきたはずの原発の事故によって、突然それまで住んでいた福島県を追われ、生活を破壊され、それでも必死に避難生活を送ってきました。しかし、今、行政の判断一つで住宅を追われようとしています。
このように私たち避難者の生活は今でもとても不安定なものなのです。
3 帰りたくても帰れない現実
仮設住宅の提供の打ち切りは、福島県への帰還や避難者の「生活再建」を促すためだとされています。また、先日、発表された子ども被災者支援法の基本方針の改訂案では、「空間線量等からは、避難指示区域外の地域から避難する状況にはな」いと明記されているとの報道を目にしました。
しかし、どちらも福島の現状を全くわかっていない考え方だと思います。
例えば、私が住んでいたいわき市は、今でもタケノコ、ゼンマイ、わらびなどの山菜は、出荷が制限されたままです。しかし、最近1年ほどの間、いわきの様子を見ていると、個人的に山菜を収穫し、自宅で食べたり、お裾分けしている人もいるようで、いわきに住む知人からもそのように聞いています。
避難指示区域でないからといって、このような場所に帰れと、まして、幼い子どもたちを連れて帰れと強制される理由はありません。
私たち家族に限らず、避難者原告は、誰も好き好んで避難している訳ではありません。避難指示区域からの避難者も、避難指示区域以外からの避難者も、帰りたくても帰れないのです。
4 おわりに
このような避難者の状況を踏まえて、今年5月には、避難用住宅の長期・無償の提供を求める4万4978筆の署名が国と福島県に提出されました。
この署名は、私たち避難者はもちろん、避難者ではない多くの市民の方々から寄せられたものです。
避難者の置かれた状況を見れば、住宅の無償提供の打ち切りなど、撤回以外にないという思いはありつつも、これだけ多くの声が寄せられたにもかかわらず、提供の打ち切りを決められ、これ以上、何をすればよいのか途方に暮れています。
もし避難を続けることができず、福島県内への帰還を余儀なくされれば、東京には滅多に来ることはできなくなりますから、東京地方裁判所で、原告として、この裁判を続けていくことにもマイナスの影響が生じるのは間違いないと思います。
裁判所におかれましては、避難指示区域以外から避難している人も、今も避難を続けざるを得ない状況に置かれていること、そして、避難により経済的にも精神的にも大きな負担がのしかかっているのだということをご理解いただき、公正な判断をしていただきますようお願いいたします。
以上
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原告の意見陳述が終わると傍聴席から自然に拍手が起きました。
法廷が終了すると、近くの弁護士会館で報告集会が行われ、弁護団から法廷の説明と、参加者からの発言などがありました。
今後の予定は,
2015年 9月18日 10時~ 東京地裁101号法廷
2015年11月11日 10時~ 東京地裁103号法廷
2016年1月20日 10時~ 東京地裁103号法廷
2016年3月16日 10時~ 東京地裁103号法廷
です。傍聴をよろしくお願いします。
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