区域外避難者をめぐる問題について(1)

「区域外避難者」とは,政府による避難等の指示または指定を受けなかった地域(以下,「区域外」といいます。)から,原発事故によって放出された放射性物質による被ばくから逃れようと,避難した住民のことをいいます。

行政やマスコミは,「自主避難者」または「自主的避難者」などと呼んでいます。しかし,放射線による被ばくの影響を避けるため,やむを得ず避難しているのですから,原発事故によって避難を余儀なくされたという意味では区域内避難者(避難等の指示等を受けた地域からの避難者)と異なるところはありません。当たり前のことですが,区域外にも放射能汚染は広がっていますし,ホットスポットも多数あります。決して,「自主」的に避難したのではありません。この言葉に傷ついたという避難者の声を多く聞きます。(「区域外避難者」の支援等を行なう人の中にも「自主避難者」などという人がいますが,極めて残念なことです。)

誰でも,放射能汚染の危険にさらされない権利があります(憲法22条1項,13条)
誰でも,放射能汚染・被曝に関する情報の公開を求める権利があります(憲法21条1項,13条)
誰でも,不自由なく避難生活を送る権利があります(憲法13条)

また,「国内強制移動に関する指導原則」の序の2によると,
「国内避難民」とは,「特に武力紛争,一般化した暴力の状況,人権侵害もしくは自然もしくは人為的災害の影響の結果として,またはこれらの影響を避けるため,自らの住居もしくは常居所地から逃れもしくは離れることを強いられまたは余儀なくされた者またはこれらの者の集団であって,国際的に承認された国境を越えていないものをいう。」とされています。
そして,同原則3-1「国家当局は,その管轄内にある国内避難民に対して保護および人道的援助を与える第一義的な義務および責任を負う。」(原則3-1)とし,
同原則3-2「国内避難民は,国家当局に対して保護および人道的援助を要請し,かつ,国家当局からこれらを受ける権利を有する。」(原則3-2)としています。

このように,区域内外を問わず,避難する権利は,憲法上当然の権利であり,国際的にも要請されるところです。

しかし,実際には,区域外避難者は,「避難者」として扱われず,過酷な状況に追い込まれています。具体的な問題は,次回に述べたいと思います。

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