本日、福島原発被害東京訴訟原告団(鴨下裕也代表)及び福島原発被害首都圏弁護団(中川素充・森川清代表)が共同で、先の今村雅弘復興大臣の暴言及び応急仮設住宅の無償提供の打ち切りに対する抗議声明を発表しました。
以下で、その全文を掲載いたします。
今村雅弘復興大臣の暴言及び応急仮設住宅の無償提供の打ち切りに対する抗議声明
2017年4月6日
福島原発被害東京訴訟原告団
原告団長 鴨下 祐也
福島原発被害首都圏弁護団
共同代表 中川 素充
同 森川 清
1 今村雅弘復興大臣(以下、「今村復興大臣」という。)は、2017年4月4日の記者会見で、福島原発事故による避難指示区域外からの避難者(以下、「区域外避難者」という。)に対する応急仮設住宅の無償提供を2017年3月末で打ち切ったことに関する記者の質問に対し、区域外避難者について「それは本人の責任でしょう。本人の判断でしょう。」と述べた上、「自己責任か」と問われると「それは基本はそうだと思いますよ。」「裁判だ何だでもそこのところはやればいいじゃない。またやったじゃないですか。」などと発言した。
2 しかし、これらの今村復興大臣の発言は、断じて許すことができない。
まず、「本人の責任」「本人の判断」という発言は、区域外避難者が、福島原発事故による放射能汚染に伴う被ばくのリスクを避けようとして、自分自身や子どもたちを守るため、やむにやまれず避難している実情を全く理解しないものである。
われわれが闘っている福島原発被害東京訴訟の法廷では、区域外避難者の原告の自宅等の敷地内で、放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律施行規則に定める「管理区域」の指定基準を超える土壌汚染が残っていることを示す証拠が提出されている。このように、避難元においては、福島第一原発から放出された放射性物質による深刻な汚染が、いまだ解消されていない。放射性物質汚染対処特措法の重点調査地域に指定されながら除染が行われていない場所も多々あり、また、山林等の除染も行われていない。フレコンバッグに入ったままの除染廃棄物が「保管」の期限を超えて、除染現場や仮置き場などに残されている。避難元では、日常的に放射能汚染と向き合うことを強いられ、不安を抱えた生活を余儀なくされている。こうした状況から、多くの区域外避難者は、たとえ応急仮設住宅が打ち切られても。避難を続けるしかないと考えているのである。
そして、区域外避難者は、ごくわずかな賠償しか受けられないまま、あるいは、まったく賠償を受けられないまま、生活費の増加に苦しむ避難生活を続けている。子どもを避難させるため、生計維持者を避難元に残し、「二重生活」という家族の分断を余儀なくされている避難者も多い。これは原発事故による被害であり、区域外避難者も原発事故被害者であることに変わりはない。
このように、区域外避難者は、自由な意思のもとで避難を選択したのではなく、今村復興大臣のいうような「自己責任」を問われる筋合いはない。原発事故さえなければ、区域外避難者も避難することもなく、平穏な生活を送ることができたのである。
また、被害の回復を国が進んで行わない現状では、避難者は裁判に訴えて国の責任を追及するしか途がない。これに対し、国の責任者が「裁判でも何でもやればいい」「(実際に)やったじゃないですか」等と言い放つことは、開き直った挑戦的な態度であって、区域外避難者を侮辱するものである。
3 前橋地方裁判所は、2017年3月17日、原発事故の賠償を求めた集団訴訟の判決で、東京電力だけでなく、国の加害責任を認めた。しかも、同判決は、避難区域の内外を問わず、避難をし、避難を継続することの合理性を認めた。そして、区域外避難者についても、避難生活によって、人格権(憲法13条)に基づく平穏生活権が侵害されていることを被害として認め、国にも賠償を命じたのである。
加害者である国が、被害者である区域外避難者に対して、応急仮設住宅の無償提供を打ち切り、原発事故被害者を切り捨てる政策を進めることは、被害を拡大させる重大な人権侵害であり、到底許されない。
4 国は、前橋地裁判決において、東京電力とともに、全面的に事故責任を負うとされた。国は、判決を率直に受け止めて、自ら加害者であることを認め、被害が今も続いている現状を直視しなければならない。国は、原発事故の加害者として、すべての原発事故被害者に対し、被害の回復に見合う賠償を行い、区域外避難者に対する避難用住宅の無償提供を含めた生活再建のための諸政策を策定し、実施しなければならない責任を負っているはずである。
今村復興大臣の上記発言は、福島原発事故の被害を全く無視し、責任を逃れようとするものであって、本来原発事故の被災者をサポートする立場にある復興大臣として、まったく無責任、不適格であるというほかない。安倍晋三内閣総理大臣の任命責任も問われる。
5 われわれは、こうした今村復興大臣の暴言に対して、厳重に抗議するとともに、直ちに復興大臣を辞任することを強く求める。
また、暴言のもととなった区域外避難者に対する応急仮設住宅の無償提供の打ち切りに対しても、厳重に抗議するとともに、直ちに撤回し、避難のための住宅を再び無償で提供するよう強く求める。
その上で、国に対し、前橋地裁判決で示された加害責任を真摯に受け止め、すべての原発事故被害者の生活の再建が可能となる賠償と被害回復のために必要な諸施策を国の責任で直ちに実施するよう強く求めるものである。
以上