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福島原発被害東京訴訟東京判決を受けての声明

福島原発被害東京訴訟東京地裁判決を受けて、原告団・弁護団は声明を発表しました。

<福島原発被害東京訴訟東京判決を受けての声明>
1 はじめに
 本日,東京地方裁判所民事第50部(水野有子裁判長,浦上薫史裁判官,仲吉統裁判官)は,福島原発被害東京訴訟について,国の責任を認め,被告国と被告東京電力に対し賠償を命じる判決言い渡した。
 この訴訟は,2011年3月11日に発生した東京電力福島第一原子力発電所事故により,福島県内から東京都内へ避難を余儀なくされた原告ら17世帯48名(後に1名死亡)が,国と東京電力を被告として,2013年3月11日に提訴したものである。
2 被告らの責任について
 本判決では,まず,被告国は,2002年には,福島第一原発において炉心溶融を伴う重大事故をもたらす原発の敷地高を超えて敷地が浸水する津波が発生することを予見することができたとし,2006年までに電気事業法40条に基づく技術基準適合命令を発して東京電力に対し原子炉施設の安全性を確保する権限を行使していれば,本件事故結果を回避できたことを認めた。
 すなわち,被告国において2002年に敷地高さを超える津波を予見したうえで,被告東京電力において,津波による全電源喪失を想定したバッテリー設置,手順策定等の対策を講じさせていれば回避できたと判断した。
 このように本判決は,昨年3月の前橋地裁,10月の福島地裁,昨日の京都地裁に続いて,四度,司法の場において,福島原発事故について被告国及び被告東京電力の加害責任を明確にし,断罪したものである。
 このように福島第一原発事故における被告らの加害責任に関する論争は,決着がついたものと言って過言ではない。被告らは,今後,無用な争いを続けることなく,被害者に対して,加害責任を認め,謝罪し,誠意ある対応をすべきである。
3 賠償額について
(1) 判決は,原子力損害賠償紛争審査会が定めた中間指針を「金科玉条」のごとく掲げて,これを超える賠償請求を拒絶し続けている被告東京電力に対して,原賠法を引用し,自主的に参照される目安にとどまるものであり,裁判所を拘束するものではないとして,一蹴した。中間指針の裁判規範性については,これまでの各判決においても否定しており,もはや,論ずるまでのことではない。
(2) 次に,判決は,原告らいわゆる区域外からの避難者についても,放射性物質の汚染による健康への侵害の危険が一定程度あるとして,避難をすることに合理性があると判断した。
  しかしながら,判決では,区域外避難者について,本件事故との間の相当因果関係が認められる損害が発生した期間として原則として2011年12月まで(ただし,子ども妊婦は2012年8月まで),旧緊急時避難準備区域からの避難者については,中間指針と同様2012年8月までに限定している。しかし,原告らの自宅・避難元の土壌汚染はなお放射線管理区域と指定される基準を超える状態が続いており,いまなお,放射線被ばくリスク回避行動をとるべき合理性があるというべきであって,避難期間を限定した判断には理由がないといわざるを得ない。
(3) そのうえで,判決は,それぞれの原告が本件事故によって被った精神的苦痛を個別具体的に認定したうえで,これをもとに原告らについて本件原発事故と因果関係のある精神的損害に対する慰謝料として区域外避難者について70万円~200万円(既払金による控除前の金額)を認めた。これらは中間指針に基づく賠償額を若干ではあるが上回っている点は評価したい。
  しかし,それでもなお認容された慰謝料額では,原発事故被害者の精神的損害を慰謝するためにはなお不十分であると言わざるをえないのであり,すべての原発事故被害者に対して適正な賠償を実現することは本判決においても,なお克服すべき課題である。
4 原発事故被害者の全面救済を
 2011(平成23)年3月11日に発生した福島第一原発事故から既に7年が経過した。にもかかわらず、放射能で汚染された地下水が海へ流出し続けるなど、依然として事故の収束の目途は立っていない。未だ多くの人々が避難を余儀なくされており、被災者の被った甚大な被害の原状回復と完全賠償も実現されていない。それどころか応急仮設住宅の無償提供打ち切りなど,避難者の生活を脅かす事態が進行している。
 これまでの各判決,そして,本日の判決において,被告国や被告東京電力の加害責任が司法の場においても明らかとなった今,国や東京電力が行うべきは,被害者の切り捨てではなく,加害責任を前提にした原発事故の過酷な被害実態を踏まえた完全賠償の実現及び生活圏の原状回復を含む生活再建のための諸施策をとることを強く求める。
 私たち原告団・弁護団は,本判決を受けて,今後も,被告国及び被告東京電力の責任において,すべての原発事故被害者が原発事故前のくらしを取り戻すための原状回復措置をとること及び被害に対する完全賠償を実現させるために全力を尽くす決意である。
2018(平成30)年3月16日
福島原発被害東京訴訟原告団
福島原発被害首都圏弁護団

福島原発被害東京訴訟・3月16日東京地裁判決のご報告

【国の責任を四たび断罪!】福島原発被害東京訴訟の判決がありました。東京地裁民事50部は、国と東京電力に対し、連帯して、原告47名のうち42名に対し総額5923万9092円の損害賠償を支払うよう命じる判決を言い渡しました。

これで、国の事故責任が認められた判決が4つ目。いわき・福島・郡山からの区域外避難者(地元に残った家族を含む)に対しても、中間指針に基づく賠償額を上回る賠償が認められました。

避難区域外を含め、国は被害の全面回復を行うべきです。

なお、この判決については、全ての主要メディアで報道されました。

原発事故 避難者の集団訴訟 国と東電に賠償命じる 東京地裁(NHKニュース 3月16日 15時27分)
https://www3.nhk.or.jp/n…/html/20180316/k10011367711000.html

原発避難訴訟 国と東電の責任認め賠償命令(日本テレビ 2018年3月16日 21:47)
http://www.news24.jp/articles/2018/03/16/07388223.html

東京への自主避難者らの訴訟、国と東電に5900万円賠償命令(TBS 16日17時36分)
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3317946.html

原発避難 東京地裁も国の責任を認める(フジテレビ 03/16 22:05)
https://www.fnn-news.com/…/headl…/articles/CONN00387381.html

改造命じていれば回避できた…原発避難者の集団訴訟(テレビ朝日 2018/03/16 17:21)
http://news.tv-asahi.co.jp/news_soc…/articles/000123039.html

原発事故の自主避難、国と東電に賠償命令 東京地裁(朝日新聞 2018年3月16日21時12分)
https://www.asahi.com/articles/ASL3J4WR4L3JUTIL02M.html

子ども2人が避難先でいじめに 自主避難者原告の苦悩(朝日新聞 2018年3月16日21時25分)
https://www.asahi.com/articles/ASL3H7KL2L3HUTIL05F.html

原発避難訴訟 東京地裁も国と東電に賠償命令 国は4例目(毎日新聞2018年3月16日 15時20分(最終更新 3月16日 20時46分))
https://mainichi.jp/articles/20180316/k00/00e/040/267000c

福島第1原発事故 集団訴訟 「家族だけは守りたい」 自主避難者、不安残す(毎日新聞2018年3月17日 東京朝刊)
https://mainichi.jp/articles/20180317/ddm/012/040/037000c

原発避難訴訟 「国に責任」判決相次ぐ「津波予見できた」(毎日新聞2018年3月16日 21時50分(最終更新 3月16日 23時04分))
https://mainichi.jp/articles/20180317/k00/00m/040/169000c

原発避難者訴訟「事故防げた」、東京地裁も国と東電に賠償命令 国敗訴は4例目(産経新聞 2018.3.16 20:41)
http://www.sankei.com/affairs/…/180316/afr1803160029-n1.html

「原発事故、回避できた」 東京地裁も国に賠償命令(日本経済新聞 2018/3/16 19:28)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO2823189016032018CC1000/

原発避難訴訟、国の責任も認め賠償命令…4例目(読売新聞 2018年03月16日 20時48分)
http://www.yomiuri.co.jp/national/20180316-OYT1T50079.html

国に4度目賠償命令 自主避難「原発事故と因果関係」 東京地裁(福島民報 2018/03/17 08:53 カテゴリー:主要 )
http://www.minpo.jp/news/detail/2018031750017

自主避難に「合理性」 東京地裁、東電と国の過失認め賠償命令(福島民友 2018年03月17日 08時40分)
http://www.minyu-net.com/news/news/FM20180317-253061.php

「苦痛見合った額でない」 原発事故東京判決、原告は表情曇る(福島民友 2018年03月17日 08時50分)
http://www.minyu-net.com/news/news/FM20180317-253066.php

<原発自主避難訴訟>「ようやく避難者と認めてもらえた」原告ら、つらい生活振り返る(河北新報)
http://www.kahoku.co.jp/tohokune…/201803/20180317_73035.html

原発事故 国の責任4度目認定 東京地裁「自主避難は合理的」(東京新聞 2018年3月17日 朝刊)
http://www.tokyo-np.co.jp/…/…/201803/CK2018031702000144.html

国の責任認定、4件目=原発事故で賠償命令-避難者訴訟・東京地裁(時事通信 2018/03/16-19:44)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2018031600865

国・東電に4度賠償命令 原発訴訟 東京地裁も断罪「自主避難は合理的」(赤旗 2018年3月17日(土))
https://www.jcp.or.jp/…/aik…/2018-03-17/2018031715_01_1.html

原発避難、国に4度目の賠償命令 東京地裁、事故「回避できた」(共同通信 2018年3月16日 午後3時33分)
http://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/306329

 

福島原発被害東京訴訟・判決言渡し期日(第1次訴訟及び第2次訴訟)のお知らせ

ついに判決です!

3月16日(金)午後3時から、原発事故を引き起こした国と東京電力の責任を問う「福島原発被害東京訴訟」(1・2次)の判決が、東京地方裁判所103号法廷で言い渡されます。

昨年の群馬訴訟(前橋地裁)と生業訴訟(福島地裁)の判決で国の責任が断罪された流れを加速し、避難区域外においても損害のひどさを十分に償わせなければなりません。

原告の皆さんの応援のため、ぜひ傍聴に来てください。

当日は、午前1時30分から東京地裁正門前で門前集会・入廷行動を行いますので、こちらにもお集りください。

午後4時ころから、全日通霞が関ビル会議室(千代田区霞が関 3-3-3)に場所を移し、報告集会を行います。報告集会では、判決内容の報告等をいたしますので、多くの方のご参加をお願いします。

▽裁判所の交通案内=東京メトロ丸ノ内線,日比谷線,千代田線「霞ヶ関駅」A1出口すぐそば、東京メトロ有楽町線「桜田門駅」5番出口から徒歩3分
▽問い合わせ先=〒160-0022 東京都新宿区新宿1丁目19番7号 新花ビル6階 オアシス法律事務所内 福島原発被害首都圏弁護団/電話 03-5363-0138 /FAX 03-5363-0139
メール shutokenbengodan@gmail.com
ブログ http://genpatsu-shutoken.com/blog/
フェイスブック https://www.facebook.com/genpatsuhigai.shutoken.bengodan

<責任取ってよ!第7回広域避難者集会2018>のご案内

2月12日、<責任取ってよ!第7回広域避難者集会2018>に是非多くの市民の皆さんのご参加をお願いします!

日時:2月12日(休)午後1~3時
場所:弘済会館(四ツ谷・麹町)
(東京都千代田区麹町5-1)
※JR地下鉄四ツ谷駅徒歩5分、地下鉄麹町駅徒歩5分
参加費:無料

毎年この時期に開いている広域避難者集会も7回目を迎え、原発事故避難者の避難生活は8年目に入ろうとしています。
国と福島県は昨年3月、避難区域以外からの避難者に対する避難住宅の無償提供を打ち切り、被害者切り捨てを目論んでいます。賠償問題では3月16日の東京訴訟などで判決が次々言い渡されます。裁判に勝つだけでなく、国と東電の責任逃れを許さないことが重要です。今年の広域避難者集会は、関西から原発事故避難者の森松明希子さんを招き、東京に避難している鴨下祐也さんと対談します(メイン企画)。とすねっとときらきら星ネットが合同で行った2017年度の避難者実態調査の結果も報告します。この集会で、市民が避難者の皆さんと思いを1つにし、しっかり責任を取らせましょう。

<内容>
第1部「責任取ってよ!東西避難者対談」
森松明希子さん(東日本大震災避難者の会Thanks&Dream代表、原発賠償関西訴訟原告団代表)+鴨下祐也さん(ひなん生活をまもる会代表、福島原発被害東京訴訟原告団長)、司会・森川清(東京災害支援ネット<とすねっと>代表、福島原発被害首都圏弁護団共同代表)/報告=避難者実態調査(とすねっと+きらきら星ネット、報告は司法書士の山田修司・とすねっと事務局次長)
第2部「避難者リレートーク」
司会・信木美穂(きらきら星ネット)

参考=お招きする森松明希子さんの紹介記事
https://www.cataloghouse.co.jp/yomimono/genpatsu/morimatsu/
https://mainichi.jp/articles/20161103/ddn/004/070/042000c

主催=東京災害支援ネット(とすねっと)、ひなん生活をまもる会、きらきら星ネット、福島原発避難者の追い出しをさせない!!市民の会
協力=福島原発被害東京訴訟原告団、福島原発被害首都圏弁護団、福島原発被害東京訴訟サポーターズ
連絡先=ひぐらし法律事務所内・広域避難者集会運営事務局(山川)電話03-6806-5414。避難者の方はフリーダイヤル0120-077-311。

国・東京電力の加害責任を断罪し新たな原発被害救済の枠組みを作る「全国総決起集会」の参加のお願い

原発弁護団ポスター20171201(改訂3)[26935]

2011年3月11日の福島第一原発の事故から、もうすぐ7年が経とうとしています。

私達は、2013年から全国の裁判所で、最大にして最悪の公害である原発事故を引き起こした国と東京電力の法的責任を追及し、被害の完全救済を実現するための枠組み作りを目ざして裁判を進めてきました。

2017年3月には前橋、9月に千葉、10月に福島の裁判所で、被害救済につながる原告勝訴の判決を勝ち取ってきました。

そして、2018年3月には京都、東京、福島いわきでの3連弾判決が言い渡されます(2018年3月15日京都地方裁判所/ 3月16日東京地方裁判所/ 3月22日福島地方裁判所いわき支部判決)。

私達は、この3連弾判決で国の責任は最早争う余地のないことを明らかにし、新たな被害救済の枠組み作りを進めるための大きな前進を勝ち取っていきたいと考えています。

そこで、3連弾判決を梃子に全面解決を展望するために下記の集会を開催する事と致しました。ぜひ多数の方々のご参加をお願い致します。

日 時   2018年1月27日(土) 14:00~16:00

なお、同日、文京区民センターで

① 11時から12時まで「原発被害者訴訟全国連・総会」

② 13時から14時まで「原発被害訴訟全国支援ネットワーク」の設立総会

も予定しています。また

③ 16時20分から16時50分まで、後楽園周辺でスタンディングイング・アピール行動

を予定していますので、ぜひご参加下さい。

場 所   文京区民センター(文京区本郷4-15-14)

地下鉄三田線・大江戸線「春日駅」、丸ノ内線「後楽園駅」

 

(主催)

原発被害者訴訟原告団全国連絡会

原発事故弁護団全国連絡会

福島原発京都訴訟原告団・弁護団

福島原発東京訴訟原告団・弁護団

福島原発被害原告団・弁護団

 

(連絡先)

新宿区新宿2-1-3サンシティー新宿御苑10F

スモン公害センター内

原発全国連事務局  Tel 03(6709)8090

結審期日の意見陳述~その5

去る10月25日に行われた福島原発被害東京訴訟の結審期日。原告2名と弁護団3名の意見陳述が行われました。最後に、福島原発被害首都圏弁護団の共同代表である中川素充弁護士による総括としての意見陳述をご紹介します。

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1 この裁判は,福島第1原発事故について,被告国及び被告東電の法的加害責任の明確化,区域内外や避難者・滞在者を問わず,生活再建にふさわしい完全賠償の実現を求めて,2013年3月11日,3世帯8名の提訴をしました。続けて,同年7月26日に14世帯40名が提訴し,これまで24回の口頭弁論期日及びその後の進行協議期日を経て,本日,17世帯47名の原告について第25回目の期日である結審期日を迎えました。お分かりのように,原告が1名減っています。訴訟中に亡くなりました。
なお,追加提訴もあり,現在約280名が原告となっています。
私たちは,これまでの主張・立証を通じて,被告国及び被告東電の故意・重過失と言うべき法的加害責任,原発事故被害者である原告らの過酷な被害実態を明らかにしてきました。

2 あの福島原発事故が発生してから,6年7ヶ月余の月日が経ちました。
原発事故により,福島第1原発から莫大な放射性物質が環境に放出され,福島県のみならず東北・関東地方を中心に各地が汚染されました。INESで「レベル7」,あのチェルノブイリ事故に匹敵するものです。現在も廃炉の見込みは立っておらず,破壊された福島第1原発から放射性物質の環境への放出は続いています。除染も依然として,不充分なままで,放射性物質による汚染の実態は大きく変わりません。もはや,本件原発事故前の状態に戻すことはもはや不可能であると言っても過言ではない状況です。
これまでの各証拠や3期日に渡り行われた本人尋問,本日も含めた意見陳述などを通じて,被害実態をご理解頂けたかと思います。避難者は,依然として,肉体的・精神的・社会的・経済的に困難な状況で避難生活を送り続けており,その深刻さは日を追うごとに悪化しています。地元に留まっている滞在者も,廃炉の目途が立たない福島第一原発を背にして,24時間365日,放射性物質に汚染された環境での生活を余儀なくされています。
原告らを含め原発事故被害者には,落ち度など何一つありません。原発事故被害者は,突然,絶望のどん底に落とされ,今も苦しみ続けているのです。これは,人生被害そのものです。被害者のなかには,将来を悲観し,自ら命を絶った者もいます。そこまで追い詰められてしまうほどの甚大な被害をこの原発事故はもたらしてしまったのです。
では,こうした被害に対して,被告国や被告東電は,一体何をしてくれたのでしょうか。6年7ヶ月間,まともな施策などありませんでした。被告国は,あたかも「原発事故は収束した」「放射能は安全である」と喧伝し,「福島復興」「福島再生」などと称した帰還政策を強力に進めています。被害者の声を無視した応急仮設住宅の無償提供打ち切りや避難指示の一方的解除などは,その典型例です。
また,被告東電は,自らや同じく加害者が一方的に策定した賠償基準を「被害者」に押しつけています。

3 実際に,この裁判においても,依然として責任を認めず,原告ら被害者を蔑ろにし,切り捨てるかのごとき主張を展開してきました。
そこには,「ふつうの暮らし」を突如奪われた被害者の苦難,悲しみ,不安等に対して,真摯に向き合おうとする姿勢が微塵たりともありません。
しかも,こうした被告らの主張は,大きく誤っています。
例えば,低線量被ばくの問題についてです。本件訴訟の争点である避難の合理性に関わる問題です。
被告らは,低線量被ばくの危険性について,「連名意見書」等を通じて,低線量被ばくの危険性を述べる疫学論文,それを引用・紹介した崎山医学の意見書などを論難しています。
しかし,関係証拠,京都地裁における崎山証人らの証言,これらをまとめた最終準備書面をご覧いただければ分かると思います。こうした批判は,いずれも些末な揚げ足取りで批判に値しないものばかりです。
そもそも,被告らをはじめ低線量被ばくのリスクを過小評価する人たちは,現実に査読を経て公表されている低線量被ばくの危険性を述べる論文が集積され続けているという重要な事実から目を背けています。現実の被害だけでなく,科学者として科学に対する真摯な姿勢,誠実さの欠片もありません。

4 現在,全国で1万人以上もの原発事故被害者が訴訟を提起し,司法による救済を求めています。
それは,加害者主導で進められている「被害救済」が真の被害救済ではないからです。東電への直接請求では,東電基準の賠償基準でしか応じません。原発ADRは,裁定機能がないという欠陥があるため,東電が応じそうな和解内容の提案しかなされません。現に,「東電も受諾するという可能性が高い和解案を出すというのが仕事」などと言ってはばからない仲介委員もいます。
特に,区域外避難者・滞在者に対しては,賠償に値しないお見舞い金程度の支払いしか行なわれていないのです。
そして,全国の大半の集団訴訟において,国を被告としています。それは,国策民営で原子力政策を推進した被告国が自らの責任にあまりにも無自覚で,被害者切り捨ての施策を平然と行なっているからです。
こうした「棄民政策」を改めさせるためには,被告国や被告東電の法的加害責任を明確しなければなりません。そこから真の「福島復興」「福島再生」がはじまります。
この裁判の原告をはじめ全国各地の裁判の原告は,被告国や被告東電を非難し,叩き潰すために裁判をしているのではありません。失われた自分たちの暮らしを取り戻し,ふるさとである福島の復興・再生を切に願っているからこそ,やむにやまれず裁判を起こしているのです。
裁判所におかれては,こうした全国で展開されている裁判の意義,多くの原発事故被害者が司法による救済を求めている事実を重く受け止めほしい。裁判所を含めた私たち司法に課せられた課題です。

5 これまで集団訴訟において,前橋地裁,千葉地裁,福島地裁の3つの判決が出ました。しかし,残念ながら,これらに共通するのは,本気で被害救済を図ろうとする「意気込み」「勇気」が欠けていることです。
前橋地裁,福島地裁は,被告らの法的加害責任を認めました。当然のことです。しかし,千葉地裁は,概ね原告の主張する事実を採用し,予見可能性を認めながらも,突如,コスト論に重きを置いて,結果回避義務・結果回避可能性を消極的に判断しました。しかし,このような原発事故のリスクを上回るコスト論というのは,一体,どこに存在するのですか。抽象的なコスト論に惑わされて,法的加害責任に踏み込む「勇気」がなかったものと言わざるをえません。
また,3つの判決は,被害・損害論について,全体として賠償額が低い。しかも,低線量被ばくのリスクを否定していないにもかかわらず,区域内外に著しく大きな差をつけてしまいました。これは,被害実態を的確に捉えていないし,区域内外で避難生活の過酷さは共通している事実にも真正面から踏み込む「勇気」がなかったものと言わざるをえません。
なかには,加害者である被告東電や被告国が策定した何ら法的拘束力もない東電賠償基準や中間指針を下回るような判断もあります。ここに至っては,司法の機能不全としかいいようがありません。

6 裁判所・裁判官は,「公正・中立」が求められると言われます。
しかし,釈迦に説法ですが,この「公正・中立」は,原告と被告との間をとるということではありません。加害行為に対しては,それを的確に認定し,過酷な被害実態に対しては,被害回復に見合った賠償を命ずることが「公正・中立」なのです。
先例にとらわれるということでもありません。
本件原発事故は,日本の司法がこれまで経験しなかった広範囲で深刻な公害事件ですから。
今,求められているのは,人権の最後の砦である司法に望みを託している被害者の声をきちんと受け止め,人としての良心にしたがって,法曹としての高い専門性を駆使して,「勇気」のある,そして,真っ当な判断をすることではないでしょうか。
私たちは,来年3月16日午後3時,この東京地裁103号法廷にて,水野裁判長,浦上裁判官,仲吉裁判官が絶望の底にいる原告らをはじめ全ての原発事故被害者に希望の光を照らす正義の判決を下すものであると確信しています。

以上

結審期日の意見陳述~その4

去る10月25日に行われた福島原発被害東京訴訟の結審期日。原告2名と弁護団3名の意見陳述が行われました。今回は、吉田悌一郎弁護士による、損害論に関する意見陳述(特に、区域外避難者の受ける被害について)をご紹介します。

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1 本件訴訟の原告は、そのほとんどが、いわゆる政府による避難指示を受けなかった地域からの避難者、つまり区域外避難者である。本件訴訟においては、いわゆる原告番号制がとられ、ほとんどの原告は、自分の名前を出して被害を訴えることができない。この被害者が「声を出せない」ということが、区域外避難者の被害の最大の本質的な特徴である。
被害者が声を上げることができない最大の理由は、被告国や被告東電が、避難指示の内外で被害者の線引きを行い、区域外避難者の被害の切り捨てを行ってきたことにある。そのため、区域外避難者は、避難指示区域内からの避難者とは異なり、これまで被告東電からほとんど賠償金の支払いを受けることがなかった。だから、区域外避難者は、避難生活を続けること自体に大きな経済的困難が伴っている。
しかし、それだけではない。被告らによる区域外避難者に対する線引き政策のために、区域外避難者は一般的に「自主避難者」などと呼ばれ、「政府が避難を指示していないにもかかわらず、勝手に逃げた人」などといった間違ったイメージを徹底的に植え付けられた。その結果、世間の心ない人たちから、たとえばインターネット上で「税金泥棒」とか「エセ避難者」などと言われ、理不尽な誹謗中傷を受けることがある。その結果、多くの区域外避難者は、自分が原発事故の被害者なのだと公言することを躊躇し、声を閉ざしてしまうのである。
2 これまで、本件と同様に区域外避難者の被害が争点として争われた主な判決として、特に今年に入ってから、3月の前橋地裁判決、9月の千葉地裁判決、そして先の10月10日の福島地裁判決がある。しかし、残念ながら、これらの判決はいずれも、一定の範囲で区域外避難者の合理性を認めたものの、その被害をきちんと正面から受け止めたものとは言えず、区域外避難者の救済という観点からは極めて冷淡な判決となっている。特に、9月22日の千葉地裁判決は、区域外避難者の損害に関する冒頭の部分で、「避難指示等によらずに避難をした人々は、避難前の居住地から避難を余儀なくされたわけではなく、居住・転居の自由を侵害されたという要素はない」と断言している。これは、区域外避難者の被害というものに対して、大変な無知・無理解に基づくものであり、その点では、極めて不当な判決であると言わざるを得ない。
3 この千葉の判決が言うように、区域外避難者は、本当に避難を余儀なくされたとは言えないのだろうか。原告らは今回、福島の避難元(政府による避難指示区域外)の自宅の庭やその周辺などの、土壌の放射能汚染の調査を丹念に行った。その結果、調査を行った原告に関わるほぼすべての場所について、いわゆる放射線管理区域の指定基準となる1平方メートルあたり4万ベクレルを超える放射能が計測された。4万ベクレルどころか、10万ベクレルを超える場所も決して珍しくはなかった。放射線管理区域は、厳重に人の立ち入りや飲食などが制限される場所であり、放射線防護のための厳重な管理が施される区域である。つまり、原告らの避難元の自宅敷地などは、この放射線管理区域の内部と同等以上に放射性セシウムによって汚染されているのである。
このような場所は、本当に安全なのか。このような場所に、原告たちは帰るべきだと、避難を続ける必要はないと、言い切れるのだろうか。このような土壌汚染が深刻な場所で、たとえば庭の手入れをしたり、子どもが庭で土いじりをして遊んだりすれば、チリやホコリなどを吸い込むことで内部被ばくしてしまう危険性もある。このような危険な場所からは避難したいとか、せめて子どもだけは遠ざけたいと思うのは、極めて合理的な感覚なのではないだろうか。
4 区域外避難者は、何も好き好んで長年避難生活を送っているわけではない。区域外避難者に対しては、被告東電から賠償金がほとんど支払われていないこともあり、多くの区域外避難者は、生計維持者である夫が避難元に残り、母子のみで避難生活を送っているケースも少なくない。特に子どもの被ばくなどを避けるために、やむにやまれず家族がバラバラの避難生活を余儀なくされているのである。
ある母子避難の原告は、4歳の息子さんが支援者から500円のお小遣いをもらったときに、その4歳の子どもはそのお金を持って真っ先にお母さんの所に来て、「ねえ、お母さん、このお金、お父さんにあげて。このお金があるからお父さんに仕事辞めてもらって、みんなで一緒に暮らそうよ。」と言った。4歳の子どものこの言葉を聞いたときが一番辛かったと母親は言っている。
得てして、一番弱い立場にある子どもなどに、より大きな被害が及ぶことも多い。昨年から今年にかけて、原発事故の避難世帯の子どもが、避難先の学校でいじめに遭うというケースが相次いで報道されている。たとえば、本件原告世帯の中にも、子どもが学校で同級生から「お前、福島から来たんだってな。福島から来た子は白血病になってすぐ死んじゃうらしいじゃないか。」と言われ、それを聞いていた学校の先生が、何と「そうね。中学生ぐらいになって死んじゃうんじゃないかしら。」などと言った。それがきっかけで、その子は学校でいじめの対象になった。「どうせ死んじゃうなら今死んでも同じだろ」などと言われ、学校の階段から突き落とされたこともあった。その子が中学生になってからは、同級生から「避難者は貧乏だよな。貧乏。貧乏。」と言われ、「そんなことないよ。普通だよ。」というと、「貧乏じゃないならおごれよ。」などと言われ、同級生からお金を脅し取られたということがあった。
区域外避難者が原発事故の被害者としてきちんと世の中に認知されていないために、その子どもたちが避難先の学校で悪質ないじめを受けるということにもつながっている。最近では、子どもが学校でいじめられるのを防ぐために、学校で自分たちが福島からの避難者であることを隠しているという話もよく聞かれる。
5 このように、区域外避難者たちは、被ばくの不安のある避難元に帰ることはできず、そうかといって、避難生活を続けることについての支援はほとんどなく、世間の理解もなく、まさに孤立無援の状態に置かれている。この法廷でも証言していただいた、早稲田大学人間科学学術院教授で精神科医の辻内琢也氏は、このように社会から棄てられ、ネグレクトされ、社会的孤立に追い込まれている状態を「社会的虐待」と表現している。
この裁判は、こうした区域外避難者たちの被害をどのように把握し、受け止め、これまで切り捨てられてきた区域外避難者をどのように救済するかということが、正面から問われている。
被告国は、これまで長年にわたって電力会社と二人三脚で国策として原発を推進してきた。また、今回原発事故を起こした被告東電も、これまで原発を自らの利潤追求の手段として利用し、莫大な利益を上げてきた。
この裁判では、今回の原発事故の加害者である被告東電と被告国の加害責任を明確にした上で、まさに「社会的虐待」といった状態に追い込まれている区域外避難者に対し、適切な被害救済を行うことが、いわば司法の使命として求められている。間違っても、「声を出せない」被害者たちに、泣き寝入りを強いることがあってはならないのである。

以上