第1 はじめに
- 当弁護団では,3月10日に国,東京電力を被告として,福島原発事故の避難者,滞在者200名以上による損害賠償請求訴訟を提起します。
- 特に,今回は,都内等に避難している住民だけでなく,福島県田村市の早稲川地区(避難区域に隣接した地域住民)の集団提訴,栃木県の県北地域の住民の集団提訴も予定しています。
第2 原告予定者の概要(原告数は,早稲川地区以外は確定していません。)
- 都内への避難者 10~15世帯 40~50名
- 福島県田村市常葉町早稲川地区の住民 42世帯 152名
[福島第1原発から30キロと数十メートルの地域です。隣接地域は,区域内(旧緊急時避難準備区域)ですが,この地域は,区域外です。早稲川地区の世帯数は,約65世帯ですので,同地区の約3分の2の世帯が提訴に踏み切ることとなります。] - 福島県の他の地域(福島市,郡山市など)の住民 5~10世帯 10~20名
- 栃木県の県北地域の住民 10世帯前後 20~30名
[栃木県の県北地域は,福島県内よりも線量が高い地域もあるにもかかわず,賠償問題では完全な「蚊帳の外」に置かれていました。この地域住民の集団提訴は,初めてです。]
第3 提訴日(3/10)の予定
- 午後 提訴
- 15時30分 記者会見(司法記者クラブ)
当日は,原告も会見等に出席の予定です。
第4 提訴の特徴・意義
- 原発事故から3年が経過しようとしています。しかし,賠償問題は,遅々として進まず,特に,区域外については,ほとんど放置されたままとなっていると言って過言ではありません。当弁護団は,区域内外,避難者・滞在者を問わず,生活再建に適った完全賠償をスローガンに都内や神奈川県の弁護士などで構成されています。昨年3月11日,国と東京電力を被告とする集団訴訟を東京地方裁判所に提起しました(現在の原告数は17世帯40名)。こうした動きは,少しずつですが広がりを見せています。
- そして,今回,都内への避難者だけでなく,福島県田村市の早稲川地区の住民や栃木県県北地域の住民が立ち上がりました。
- 福島県田村市の早稲川地区は,福島第1原発から僅か30キロと数十メートルの地域です。隣接した地域は,区域内(旧緊急時避難準備区域)となっていますが,早稲川地区は,区域外とされてしまいました。この違いにより,賠償問題だけでなく,税金や医療費,義援金等についても,全く別の扱いになっています。当たり前ですが,僅か道路一本で放射線量は変わりません。このことは,地域住民の分断をも生じさせています。
- 栃木県県北地域(那須塩原市など)は,福島県に隣接していることに加えて,原発事故後の風向き等の影響から,大量の放射性物質による汚染が広がりました。現在でも測定をすると福島県内より線量がかなり高い地域が見られます。しかし,賠償問題に関しては,東電の「自主的避難等対象地域」からも外れており,(事業者への風評被害等への賠償を除けば)地域住民に対する賠償は行われていません。
- 私たちは,原発事故により,多くの人たちが現在でも,日々放射能汚染・低線量被ばくに晒され,収束しない原発事故の不安に脅えて,これまで当然に享受していた自然など生活環境を奪われてしまっている現状を明らかにするとともに,一方的な「線引き」,それによる被害の切り捨てを許さず,全ての被害者が生活再建に適った賠償を求めていくべく,今回の訴訟を提起することになりました。